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NHK「笑わない数学」(選) 第1シリーズ#7「フェルマーの最終定理」を見ました。
同名の本「フェルマーの最終定理」サイモンン・シン著(新潮文庫)も同時に紹介します。
この「フェルマーの最終定理」は、かずある数学の難問の中でもかなり有名なので、名前を聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
また、1995年に350年の時を経て証明されたということで、当時世界的なニュースとなった事も記憶に残っています。
以下、内容に触れます。
「フェルマーの最終定理」とは、
「n が3以上の場合、この式を満たす x, y, z は存在しない」というもの。
発端は17世紀。数学者フェルマーが本の余白に、この問題と
「私は真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる」
というメモだけを書き込み、証明を残さなかったことから始まります。
上式で、n=2 の時は「三平方の定理」が成り立つ場合を考えれば、答えが存在するのはすぐにわかります。
では、n が 3以上の場合はどうなのか?
一見簡単そうに見える数式ですが、「存在しない」証明はとても大変です。
大数学者オイラーが n=3 を証明しますが、これを n=4, 5, 6・・・と続けていっても決して終わりは無く、証明にはなりません。( n=4 はフェルマー自身が証明)
19世紀初頭、フランス人女性数学者ソフィ・ジェルマンが素数の一部の場合にはフェルマーの最終定理が条件付きで成り立つことを証明しますが、その後研究は停滞します。
1986年、別の分野の研究であった「すべての楕円曲線はモジュラーである」という「谷山-志村予想」がフェルマーの最終定理と結びつきます。
そこから、「谷山-志村予想」が正しいと証明できれば、「フェルマーの最終定理」も正しいと証明できるということがわかってきました。
1995年にアンドリュー・ワイルズが「谷山-志村予想」を証明し、ついに「フェルマーの最終定理」も証明されることとなりました。
ワイルズが1993年にケンブリッジ大学で、初めてこの証明を行ったときは200人もの数学者で講堂がいっぱいになり、証明が終わったときには大きな喝采がわき起こったということです。(その後、ミスが見つかり最終的に1995年に証明は完成されます)
ワイルズは10歳の時に「フェルマーの最終定理」に出会って数学者への道を志したという人物で、その彼がこの難問を証明したというのは感慨深いものがあります。
また、女性であるが故に苦労を重ねたソフィ・ジェルマンの生涯にも心を打たれるものがあります。
このワイルズによる「フェルマーの最終定理」証明の物語については、2000年にベストセラーとなったサイモン・シンの著書があります。題名はストレートに「フェルマーの最終定理」です。著者のサイモンン・シンは、ケンブリッジ大学大学院で素粒子物理学の博士号まで取得し、研究機関に勤務したこともある人物なので、数学に対する理解は深いものがあります。その後イギリスBBCに移り、「フェルマーの最終定理」のドキュメンタリー番組を制作します。そのときのインタビューや取材を元にこの本を書き下ろしているので、先に触れたワイルズが証明を行った時の講演会の場面など、多分に映像的でぐいぐいと引き込まれていきます。(本はこの場面から始まります)
かなりの大作でやや難しいところもありますが、ワイルズの7年間にわたる孤独な研究生活やその後の栄光と失意の時期など、豊富な取材に基づいた内容でとても読みごたえがあります。
テレビ番組には出てこなかった「谷山-志村予想」の谷山豊博士の若すぎる死の悲しいエピソードにも心を動かされます。
私は数年前にこの本を読みましたが、とても感動したことを覚えています。
数学が題材ではありますが、歴史的な難問の解明に心血を注いだ人間の物語です。興味を持たれた方には、ぜひ読んでいただきたい一冊です。おすすめします。
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*この記事のイラストは、Image Creator の AI によって作成されました