読書「リスを実装する」 円城塔 著

円城塔 著 「リスを実装する」Kindle Single)Kindle

 

"Kindle Single" となっていることから、紙の本は無く電子書籍 Kindle版への「書き下ろし」小説のようです。
かなり前から Amazonのお勧めに出てきていて、その題名がすばらしく、気にはなっていたのですが、Kindle unlimitedに対応してくれたので、ようやく読んでみました。
2015年の作品ということで、新しいものではありません)


★★★ 少しだけネタバレで書きます。

コンピュータのディスプレイの中に広がる森の中、マークという名のリスを主人公は観察している。
このリスはいくつかの初期値を与えられたソフトウェアとしての存在。それもグラフィックスは持たず、黒いウィンドウの中を流れる文字列にすぎない。

主人公の住む世界は、あらゆるものの自動化が激しい速度で進んでいく世界で、やがてすべての事の自動化が終わろうとしている。主人公はそのせいで次々と仕事を失いながらこれまで生きてきた。仕事だけでなく、妻や息子も・・・

★★★

 

この記事を書く前に 3回ほど読み返しました。(短編小説なので可能でした)
「自動化」であったり「ソフトウェア的な生命」がキーになっている小説かなという印象です。
はっきりとした起承転結があるわけではありません。
ただ、読んでいてその独特の世界観に浸り、リスや主人公が頭の中で動いているような感覚はある種心地よいものでした。

"API", "Hello World", "オブジェクト指向", "インスタンス" など、ソフトウェア開発にからんだ用語が出てきます。
知っていればそれなりに納得したような気にはなると思いますが、知らなくても問題なく読めるでしょう。


円城塔氏の小説は初めて読んだのですが、芥川賞などの受賞作品もあるので、次はそちらを読んでみることにしましょうか。

「道化師の蝶」第146回芥川龍之介賞受賞
「文字渦」第39回日本SF大賞受賞
屍者の帝国伊藤計劃との共著)第31回日本SF大賞特別賞、第44回星雲賞日本長編部門受賞
Self-Reference ENGINEフィリップ・K・ディック賞の次点に当たる特別賞受賞


本作は 30ページにも満たない短い小説です。
今なら(2024年7月23日現在)、AmazonKindle unlimited で読むことができるので、サクッと読んでみてはいかがでしょうか。(購入しても250円、Audible版なら0円)

お勧め・・・かどうかは微妙ですね。人によると思います。😁